連立方程式の解き方

中学で一般的に習う,連立方程式の解き方には2つの方法があります。

・ 代入法

\(x,\:と\:y\:\)の文字を含む連立方程式のひとつから,\(x\:=\:…\:\) (または \(y\:=\:…\:\))の式を作り,他方の方程式に代入して,1文字だけの式を作り,その文字の値を求めます。次に,求めた値を元の式のいずれかに代入し,他の文字の値を求めます。

・ 加減法

\(x,\:と\:y\)の文字を含む連立方程式の,どれかの文字の係数が同じになるように,式の両辺にある値を掛けます。このとき,掛ける値は,文字の係数の最小公倍数になるような値です。その後,ひとつ式と,別の式を引いて(または 足して)文字を1種類消去します。ひと種類の文字から構成される式にすると,その文字に対する値が確定するので,確定した値を元の式に代入して,他の文字の値を求めます。
文章で書いてもわかりにくいので,後ろに簡単な例題を書いておきます。
連立方程式の解き方

※ ここで示す方法は,一般的な解法であり,問題によっては,必ずしも最善の方法とは限りません。

  1. 式の係数に分数があれば,できるだけ,係数の分母の最小公倍数を両辺にかけて係数を整数にする。
  2. 式の係数に小数があれば,係数が整数になるように 両辺を10倍,100倍,・・・して係数を整数にする。
  3. 式中のかっこをはずして,同類項があればまとめる。
  4. 代入法,または,加減法で解く。どちらを使うかは式の形によりますが,文字項の係数が1の場合など,y = ax + b 等のように他の文字の係数も整数のまま変形できる場合は,代入法が簡単な場合が多いです。2つの式のいずれかの文字の係数が同じ場合は,加減法の方が簡単に解けます。
例題

次の連立方程式を解きなさい。

  1. \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} x + y = 8 \;\dots\;①\\ x \:-\: y = 2 \;\dots\;②\end{array} \right. \end{eqnarray} \)
  2. \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} 4x \:-\: 3y = 7 \;\dots\;① \\ 2x + 5y \:=\: -3 \;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
  3. \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} 6x+5y\:=\:11\;\dots\;① \\4x\:-\:7y\:=\:-3\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
  4. \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} 0.2x+0.5y\:=\:3.4\;\dots\;① \\\frac{1}{4}x + \frac{1}{6}y\:=\:\frac{3}{2}\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
解答
  1. [加減法]
    ①+② より,\(2x\:=\:10\:⇒\:x\:=\:5\)
    \(x\) の値を①に代入して,\(5+y\:=\:8\:⇒\:y\:=\:3\)
    \( ∴(x,\:y)\:=\:(5,\:3)\)
    [代入法]
    ②より,\(x\:=\:y+2\;\dots③\)。
    これを①に代入して,
    \((y+2)+y\:=\:8\:⇒\:2y+2\:=\:8\)
    両辺を2で割って,\(y+1\:=\:4\:⇒\:y\:=\:3\)
    これを③に代入して,\(x\:=\:3+2\:=\:5\)
    \( ∴(x,\:y)\:=\:(5,\:3)\)
  2. [加減法]
    ②の両辺を2倍して,\(4x+10y\:=\:-6\;\dots ③\)
    ① – ③より,\(-13y\:=\:13\:⇒\:y\:=\:-1\)
    \(y\)の値を②に代入して,\(2x+5\times (-1)\:=\:-3\)
    \(2x\:=\:-3+5\:⇒\:2x\:=\:2\:⇒\:x\:=\:1\)
    \( ∴(x,\:y)\:=\:(1,\:-1)\)
    [代入法]
    ②より,\(x\:=\:\frac{-5y\:-\:3}{2}\)。これを①に代入して,
    \(4\times \frac{-5y\:-\:3}{2}\:-\:3y\:=\:7\)
    \(-10y\:-\:6\:-\:3y\:=\:7\)
    \(-13y\:=\:13\:⇒\:y\:=\:-1\)
    ②に代入して,\(2x+5\times (-1)\:=\:-3\:⇒\:2x\:=\:5\:-\:3\)
    \(2x\:=\:2\:⇒\:x\:=\:1\)
    \( ∴ (x,\:y)\:=\:(1,\:-1)\)
    この場合は,途中に分数が現れたりして,若干,計算しにくくなりました。
    これくらいなら,まぁ,大したことはないですが,一般的に,分数が現れると,
    計算ミスが多くなるので,この場合は,加減法で解くのがよいかと思われます。
  3. [加減法]
    この式の場合は,\(x\) を使っても,\(y\)を使っても分数が出そうなので,加減法のみで計算します。
    \(x\)の項に着目すると,係数の最小公倍数は 12 であるので,両方の式の\(x\)の係数が 12 になるように式変形します。
    ①の両辺を2倍して,\(12x+10y\:=\:22\;\dots ③\)
    ②の両辺を3倍して,\(12x\:-\:21y\:=\:-9\;\dots ④\)
    ③-④より,\(31y\:=\:31 \:⇒\:y\:=\:1\)
    これを①に代入して,\(6x+5\times 1\:=\:11\)
    \(6x\:=\:6\:⇒\:x\:=\:1\)
    \(∴(x,\:y)\:=\:(1,\:1)\)

    ※ 今回は,\(x\)を消すために,両式の\(x\)の係数を12にしましたが,\(y\)の係数の最小公倍数が 35 であることを念頭に,\(y\)を消去するように式変形しても同様の手順で\(\:x,\:y\:\)が求まります。

  4. [分数や小数が混ざった方程式]
    ①の両辺を10倍して,
    \(2x+5y\:=\:34\;\dots\;③\)
    ②の両辺を12倍して,
    \(3x+2y\:=\:18\;\dots\;④\)
    ③の両辺を3倍して,
    \(6x+15y\:=\:102\;\dots\;⑤\)
    ④の両辺を2倍して,
    \(6x+4y\:=\:36\;\dots\;⑥\)
    ⑤-⑥ より,\(11y\:=\:66 \:⇒\: y\:=\:6\)
    ③に代入して,\(2x+5\times 6\:=\:34\)
    \(2x\:=\:4\:⇒\:x\:=\:2\)
    \(∴(x,\:y)\:=\:(2,\:6)\)
蛇足ですが,中学校では習わない連立一次方程式の解法としてクラメルの公式というものがあります。
あまり使われず,計算効率も悪いですが,連立方程式の解を一発で出す方法です。Scratchというプログラミング教材で作ってみましたので,興味のある方は,こちらも参照して下さい。
リンク先: クラメルの公式
この公式自体は,中学生でも証明可能だと思います。

連立方程式の利用

ここでは,2種類の未知数がある文章問題を複数の文字式で表して,連立方程式を作り,未知数を求める方法を示します。

文章問題の解き方

個数,値段,重さ,濃度など不明な値(量)が複数ある文章問題を,連立方程式を使って解く方法です。

  1. 問題文から,不明な値が何であるかを見極め,\(x,\:y (または,a,\:b等)\)の文字で置き換える。
  2. 数量の関係を文章から2つ探して,連立方程式をつくる。
  3. 連立方程式を解く。
  4. 解いた連立方程式の解と,問題が問うている値の関係を確かめ,必要に応じて最終解を求める。

 

例題
  1. 卵が6個入っているパックと,10個入っているパックを合わせて7パック買い,卵の個数が50個になるようにするには,それぞれ何パック買えばよいですか。6個入りのパックの数を\(x\),10個入りのパックの数を\(y\)として方程式を作り,解を求めなさい。
  2. A町から100kmはなれたB町に車で行くのに,ふつうの道路を時速40kmで,高速道路を時速80kmで走って,1時間30分かかりました。ふつうの道路を走った道のりと,高速道路を走った道のりを求めなさい。
  3. ある学校の去年の生徒数は 700 人でした。今年は,去年に比べて,男子が4%減り,女子が8%増えて,全体で11人増えました。今年の男子生徒と女子生徒の人数を求めなさい。
  4. 12%の食塩水と7%の食塩水を混ぜて,500gの10%食塩水を作ろうとしています。2種類の食塩水を何gずつ混ぜればよいですか。
  5. 現時点で,太郎君の父親の年齢は,太郎君の年齢の3倍より3歳多く,15年後は,父親の年齢は太郎君の年齢の2倍より1歳多くなります。現在の太郎君と父親の年齢は,それぞれ,何歳ですか。
解答
  1. 問題文から次の連立方程式が導かれる。
    \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} x+y\:=\:7\;\dots\;① \\6x + 10y\:=\:50\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
    \([①×3] \;\;\;\;\;3x+3y\:=\:21\;\dots\;③\)
    \([②÷2] \underline{ -)\;3x+5y\:=\:25} \;\dots\;④\)
    \(\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\begin{eqnarray} -2y\:&=&\:-4\\ y\:&=&\:2 \end{eqnarray} \)
    \(y\)の値を①に代入: \(x+2\:=\:7\:⇒\:x\:=\:5\)
    したがって,6個入りパックを5パック,10個入りパックを2パック買えばよい。
  2. ふつうの道路を走った道のりを\(\:x\:\) km, 高速道路を走った道のりを\(\:y\:\) kmとすると,
    \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} x+y\:=\:100\;\dots\;① \\ \frac{x}{40}+\frac{y}{80}\:=\:\frac{3}{2}\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
    ②の両辺に80をかけると,\(2x+y\:=\:120\;\dots\;③\)
    ③-①より,\(x\:=\:20\)
    これを①に代入すると,\(20+y\:=\:100\:⇒\:y\:=\:80\)
    したがって,ふつうの道路を走った道のりは 20km,高速道路を走った道のりは 80km である。
  3. 去年の男子生徒の数を\(\:x\:\)人,女子生徒の数を\(\:y\:\)人とすると,問題文より,次の連立方程式が成り立つ。
    \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} x+y\:=\:700\;\dots\;① \\ -\frac{4}{100}x+\frac{8}{100}y\:=\:11\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
    ②の両辺に100をかけて,\(-4x+8y\:=\:1100\;\dots\;③\)
    ①の両辺に4をかけて,\(\;\;\;\;\;\;4x+4y\:=\:2800\;\dots\;④\)
    ③+④より,\(12x\:=\:3900 \:⇒\:y\:=\:325\)
    \(y\)の値を①に代入して,\(x+325\:=\:700\:⇒\:x\:=\:375\)
    去年の男子生徒は 375 人,女子生徒は 325 人であるので,
    今年の男子生徒は去年の 96% で \(375\times \frac{96}{100})\:=\:360\:\) 人
    今年の女子生徒は去年の108% で \(325\times 1.08\:=\:351\:\)人

    ※ この解答では,\(x,\:y\)とおいたのが去年の生徒数ですが,問題で問うているのは今年の生徒数なので,連立方程式の解がそのまま本問題の解答にはなりません。問題の解答の仕方によっては,最後の詰めが肝心な場合がありますので,ご注意下さい。

  4. 12%の食塩水を\(\:x\:\)g,7%の食塩水を\(\:y\:\)gとすると,
    \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} x+y\:=\:500\;\dots\;① \\ \frac{12}{100}x+\frac{7}{100}y\:=\:500\times \frac{10}{100}\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
    ★★★
    (①式は,それぞれの食塩水の重さを足すと500gということを表しており,②式は,それぞれの食塩水に含まれる食塩の重さを表しています。すなわち,\(\frac{12}{100}x\)は,12%の食塩水\(\:x\:\)gに含まれる食塩の量,\(\frac{7}{100}y\)は,7%の食塩水\(\:y\:\)gに含まれる食塩の量,そして,右辺は,10%の食塩水500gに含まれる食塩の量です。このように,等式の両辺にはそれぞれ同じ意味合いを持った数値を記述することがポイントです。)
    ★★★
    ②の両辺を100倍して,\(12x+7y\:=\:5000\;\dots\;③\)
    ①より,\(y\:=\:500\:-\:x\;\dots\;④\)
    これを③に代入して,
    \(\begin{eqnarray}12x+7\times (500\:-\:x)\:&=&\:5000 \\ 12x+3500\:-\:7x\:&=&\:5000 \\ 5x\:&=&\:1500 \\ x\:&=&\:300 \end{eqnarray} \)
    これを④に代入して,\(y\:=\:500\:-\:300\:=\:200\)
    (答) 12%の食塩水300g と 7%の食塩水200g

    ★ 理科でも,同様の問題が出題されることがあると思います。この問題の解き方は是非覚えて下さい。

  5. 太郎君の年齢を\(\:x\),父親の年齢を\(\:y\:\)とすると,
    \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} y\:=\:3x+3\;\dots\;① \\ y+15\:=\:2(x+15)+1\;\dots\;② \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
    ①を②に代入すると,
    \(\begin{eqnarray}(3x+3)+15\:&=&\:2(x+15)+1 \\ 3x+18\:&=&\:2x+31 \\ 3x\:-\:2x\:&=&\:31\:-\:18 \\ x\:&=&\:13 \end{eqnarray} \)
    \(x\)の値を①に代入すると,
    \(y\:=\:3\times 13 + 3\:=\:42\)
    太郎君:13歳,父親:42歳