平方根について
中学で平方根を考えるときは,a ≧ 0 という暗黙の条件が付加されます。
0 の平方根は 0 (のみ)であり,0以外の平方根は正および負で,絶対値が等しい 2つの数になります。例えば,2の平方根は\(\pm\sqrt{2}\)であり,4の平方根は \(\pm2\) です。
ここで例示した4の平方根は\(\pm2\)であるということは,問題なく納得できると思いますが,もう一方の 「2の平方根は\(\pm\sqrt{2}\)である」という表現について少し説明します。
ここで,いきなり 「√ (ルート)」 という記号を使いましたが,「何かの値」を2乗して,整数 2 になるとき,「何かの値」は,今までに習った数の概念にはない数値であり,「√」はこれを表現するための記号です。「√」記号は「根号(こんごう)」といいます。
平方根の中には,「√」記号を使わなくても表現できる数と,「√」記号を使わなければ表現できない数があります。「√」記号を使わずに表現できる値は,「√」記号は付けないようにします。例えば,上記の4の平方根はという問題に対しては,\(\pm\sqrt{4}\) とは答えず,\(\pm2\)と答えます。「√」記号を付けずに表現できる値か否かは,「√」の中が平方数(何かの値を2乗した数)か否かで判断します。
「√」の中の数値は,素因数分解して,2乗の因数が含まれている場合は,根号の外に出します。
その他いくつかの約束事がありますが,これらは,後述の根号が付いた数の計算方法で説明します。
また,わかり易いように,根号の中は 自然数 のみで説明していますが,根号の中は,分数や小数でも構いません。
無理数について
小学校以来,分数を小数で表すと,無限小数になるものがあるという事実は,なんとなく,皆さん知っていると思います。たとえば,\(\frac{1}{3} = 0.333… \),\(\frac{1}{7} = 0.142857142857… \)であり,分数を小数で表現すると,無限に数値の列が続く場合があります。上記で示した分数の小数表現は,ある桁から先は,有限個の数の列 (かたまり) が繰り返し登場する いわゆる 「循環小数」になる性質があります。\(\frac{1}{3}\)の場合は,小数点以下が「3」の繰り返し,\(\frac{1}{7}\)の場合は,小数点以下が「142857」という数の列の繰り返しになります。しかし, \(\sqrt{2}\) という数は,小数で表したとき(1.41421356…) は循環しません。ここでは証明は書きませんが,数学的には証明されています。逆に,循環小数は (整数を分子・分母に持つ) 分数で表すことができますが,循環しない小数は 分数では表すことができません。(\(\sqrt{2}\)は分数で表すことはできません。)
分数で表すことができる数を「有理数」,分数で表すことができない数を「無理数」といいます。無理数は,新しい概念の数の仲間です。無理数の「無理」は何かができない等の「ムリ」ではなく,「理不尽な」というニュアンスの「むり」です。無理数の仲間には,平方根以外に,円周率(いわゆるπ(パイ))などがあります。
根号が付いた数の計算方法
・ √ の中が同じ値の足し算と引き算は,結合法則が成り立ちます。
\(\sqrt{a} + 2\sqrt{a} = (1 + 2)\sqrt{a} = 3\sqrt{a}\)
\(\sqrt(a)\: – \:2\sqrt{a} = (1\: – \:2)\sqrt{a} =\: -\sqrt{a}\)
・ √ で表された数値同士の掛け算は,根号内は根号内同士を掛け,根号外の数値は根号外の値同士を掛けます。割り算も同様です。
\(\sqrt{a}× \sqrt{b} = \sqrt{ab}\)
\(\sqrt{a} ÷ \sqrt{b} = \sqrt{\frac{a}{b}} \)
\(p\sqrt{a} × q\sqrt{b} = pq\sqrt{ab}\)
\(p\sqrt{a} ÷ q\sqrt{b} = \frac{p}{q}\sqrt{\frac{a}{b}}\)
このとき,a×b または a÷b の計算をした結果の値の因数が 2乗の形になる場合は,根号の外に出します。
→ \(\sqrt{2} × \sqrt{6} = \sqrt{2×6} = \sqrt{2^2 × 3} = 2\sqrt{3}\)
\(\;\:3\sqrt{6} × 2\sqrt{10} = (3 * 2)\sqrt{6 * 10} = 6\sqrt{2 * 3 * 2 * 5} = 6\sqrt{2^2 * 3 * 5} = (6 * 2)\sqrt{3*5} = 12\sqrt{15}\)
では,√ 記号が付いた掛け算は,√ 記号の中の数値を掛けた値に √ 記号を付けるのでしょうか。これを確認しておきましょう。
\(\sqrt{a} × \sqrt{b}\) を2乗すると,
\((\sqrt{a} × \sqrt{b})^2 = (\sqrt{a} × \sqrt{b}) × (\sqrt{a} × \sqrt{b}) = (\sqrt{a} × \sqrt{a}) × (\sqrt{b} × \sqrt{b}) = (\sqrt{a})^2 × (\sqrt{b})^2 = ab = (\sqrt{ab})^2\)
すなわち,\((\sqrt{a} × \sqrt{b})^2 = ab = (\sqrt{ab})^2\) であり,最初のお約束に従えば,\(ab\) の平方根は,\(\pm \sqrt{a}×\sqrt{b}\) ということになりますが,ここでは,\(\sqrt{a}×\sqrt{b}\) の値(正数または 0)を求めたいわけで,負の数の場合を考える 必要 はなく,\(\sqrt{a} × \sqrt{b} = \sqrt{ab}\) となります。\((\sqrt{a}\: ≧ \:0, \sqrt{b}\: ≧ \:0 で,\sqrt{a} × \sqrt{b} ≧ 0 ) \)
これにより,√ 記号が付いた数値同士を掛けるときは,√ 記号の中身同士を掛けてから平方根(の正の部分)を求めれば良いことになります。
また,割り算の結果,分母に根号が付く場合は,できるだけ分母の根号を外します。根号を外す方法は,分子・分母の両方に分母の根号付きの値を掛けます。(ルートの有理化)
→ \(\sqrt{2} ÷ \sqrt{6} = \sqrt{\frac{2}{6}} = \sqrt{\frac{1}{3}} = \frac{\sqrt{1}}{\sqrt{3}} = \frac{1 * \sqrt{3}}{\sqrt{3}×\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}}{3}\)
\(\;\;\: 6\sqrt{5} ÷ 2\sqrt{6} = \frac{6}{2}\frac{\sqrt{5}}{\sqrt{6}} = 3\frac{\sqrt{5}*\sqrt{6}}{\sqrt{6}\sqrt{6}} = 3\frac{\sqrt{30}}{6} = \frac{\sqrt{30}}{2}\)
根号で表された数値を含む数の大小比較
根号が付いた数値の大小関係は,根号の中の値の大小関係と同じである。→ \(a < b\; なら,\sqrt{a} < \sqrt{b}\)
\(\;\;\:\sqrt{a} < \sqrt{b}\;なら,a < b\)
根号が付いた数値と,根号が付かない数値の大小比較は,次のように判別する。
→ \(\sqrt{a}\) と b を比較する際は,
\(\;\;\: b < 0\;なら,b < ( 0 ≦ ) \sqrt{a}\;\;つまり,\sqrt{a} は正または0であるので,b\:が負なら必ず\:\sqrt{a}\:の方が大きい。\)
\(\;\;\: 0 ≦ b\;なら,b = \sqrt{b^2}\;であるので,b^2\;と\; a \;の大小比較を行う\)
\(\;\;\;\;\;\;\;\;\; →\; b^2 < a なら,b < \sqrt{a}\;そうでなければ,\sqrt{a}\:≦ \:b\)